タイを旅行すると、街のいたるところで象のモチーフに出会います。
お寺の装飾、お土産屋に並ぶ雑貨、タイパンツの柄、キーホルダー、果ては国旗にまで(かつて)描かれていた象。
「なぜタイではこんなにも象が大切にされているの?」
この疑問を持ったことがある方は多いのではないでしょうか。
タイへ何度も足を運び、現地で象グッズを仕入れてきた店主として、タイ語資料を参照しつつその答えをできるだけ丁寧にお伝えしたいと思います。
象の文化的な意味を知ると、タイ旅行がいっそう深く楽しくなりますし、象グッズを選ぶときの視点も変わります。
タイで象が神聖とされる理由

象がタイで特別な存在とされる背景には、大きく分けて宗教・王室・歴史という3つの柱があります。
宗教的な背景:仏教とヒンドゥー教の象徴
タイで信仰される上座部仏教において、象はお釈迦様の誕生と深い関係があります。
お釈迦様の母・マーヤー夫人が懐妊する夢として見たのが「白い象が右脇腹に入ってくる」というものでした。
この夢が仏陀の誕生を告げる吉兆とされたことから、象=聖なる存在・吉祥の象徴という意識がタイを含む仏教文化圏に根付いています。
またタイはインドのヒンドゥー文化の影響も色濃く受けており、ガネーシャ(象の頭を持つ神様)や、インドラ神の乗り物である三頭の神象エーラーワン(ช้างเอราวัณ)への信仰も、象を神聖視する文化を強めてきました。
王室との深い結びつき
タイ語資料によると、象は13世紀・スコータイ王朝の時代から王の威信の象徴であり続けてきました。
スコータイ・アユタヤ・トンブリー・ラッタナーコーシンと、王朝が変わっても象は常に「สัตว์คู่บารมีของพระมหากษัตริย์(王の徳の象徴となる動物)」として位置づけられてきました。
特に白象(ช้างเผือก)を保有することは王の権威の証とされ、白象が見つかると国を挙げての祝賀行事が行われました。
白象の数が王の力を示すとされ、歴代の王たちはその保有数を競いました。
その象徴性は国旗にも表れています。かつてタイの国旗には白象が描かれており、特に1855年から1916年(พ.ศ.2398〜2459)の間は赤地に白象の旗が最も広く使われました。
その後、現在の三色旗(ธงไตรรงค์)が1917年9月28日(พ.ศ.2460)に正式制定されて以降も、白象は王室の紋章・象徴として今なお受け継がれています。
戦と労働を支えた歴史的存在
タイの歴史資料には「ช้างสร้างชาติ(象が国を築いた)」という言葉が残っています
象は長い歴史の中で、タイの人々の戦争・農業・林業を支えてきた実用的な動物でもありました。
特に有名なのが、ナレスアン王(พระนเรศวรมหาราช)が象に乗って行った一騎打ち「ยุทธหัตถี(ユッタハッティー/象上の戦い)」でビルマの皇太子を討った歴史的な戦いです。
ナレスアン王の戦象は「เจ้าพระยาปราบหงสาวดี」という最高の称号を与えられました。
チェンマイをはじめとするタイ北部では、かつて象使いという職業が社会的に重要な地位を占めており、象と人間の絆はとりわけ深いものでした。
白象が特別な理由

タイで最も神聖とされる白象について、もう少し詳しく見てみましょう。
白象とは正確にはアルビノ(色素欠乏症)の象のことで、皮膚が白っぽく、目が薄い色をしています。タイ語では「ช้างเผือก(チャーン・プアック)」と呼ばれます。
「白象を持つ王は徳が高く、国に繁栄をもたらす(ช้างเผือกเป็นสัตว์คู่บ้านคู่เมือง หากกษัตริย์ครอบครองจะเป็นมงคลและช่วยให้บ้านเมืองสงบสุข)」という信仰がタイに根付いており、白象が見つかると必ず王室に献上されました。
現在もタイ王室は白象を保有しており、その数と状態は重要な王室情報のひとつとされています。
象の鼻の向きで意味が変わる?
タイの象グッズを選ぶとき、「鼻が上を向いているものと下を向いているものがあるけど、何か違いがあるの?」と思ったことはありませんか。
実はこれ、タイや東南アジアのお土産・雑貨市場では「ちゃんとした意味の違いがある」として広く伝えられています。
ただし注意が必要で、これはタイの伝統的な宗教典拠というよりも、風水の考え方やお土産市場を通じて広まった民間信仰的な解釈という側面が強く、地域や人によって説明が異なることもあります。
鼻が上を向いている象(一般的に縁起が良いとされる)

「鼻を上げているのは良い気を吸い上げている」「空に向かって吉祥を発している」として、幸運・繁栄・ポジティブなエネルギーを呼び込む象徴とされることが多いです。お守りや置物として選ぶ際、上向きの鼻の象が好まれる傾向があります。
タイファン!で取り扱っている「運気を上げる上向き鼻の象メタルキーホルダー」も、この象徴にちなんで仕入れたアイテムです。
鼻が下を向いている象(解釈が分かれる)
「縁起が悪い」と言われることもありますが、「大地にしっかり根付いている・安定・忍耐・力強さ」を表すという解釈もあります。
一概に悪いわけではありませんが、縁起物として選ぶなら上向きの鼻を選ぶのが無難です。
象の行列モチーフ
複数の象が連なるデザインは「繁栄が続く・子孫繁栄」を意味するとして、タイパンツや布地の柄としても広く使われています。
タイファン!でも「親子ゾウのお散歩メタルキーホルダー」など、行列モチーフのお土産グッズを取り扱っています。
タイの象にまつわる豆知識
象はタイ語で「チャーン」
タイ語で象は「ช้าง(チャーン)」と言います。
タイ国内の有名なビール「チャーン(象)ビール」の名前もここから来ています。
タイ旅行中に「チャーン!」と言えば、象のことを指しているとすぐわかります。
タイ語の研究論文によれば、タイ語には象に関連する語彙が183語存在し、象がタイの文化・言語いかに深く根付いているかがわかります。(出典:ラーチャバット・ダンブリー大学学術誌「คำศัพท์เกี่ยวกับ 'ช้าง' ในภาษาและวัฒนธรรมไทย」)
タイ北部と象の現在
かつて象は林業で重要な役割を果たしていましたが、1989年の森林伐採禁止法以降、仕事を失った多くの象が行き場をなくしました。
現在は観光や保護施設(エレファント・サンクチュアリ)での生活が主となっており、チェンマイ周辺には倫理的な象との触れ合いを提供するサンクチュアリが複数あります。
当店のブログでも以前、チェンマイと象の文化的なつながりをご紹介しています。あわせてぜひご覧ください。 → チェンマイと象の循環文化 ― うんちから生まれる紙の物語
タイの象グッズを選ぶときのポイント
ここまで読んでいただくと、タイの象グッズがただの「かわいいお土産」ではなく、深い文化的背景を持つアイテムだということが伝わったと思います。
象グッズを選ぶときは以下のポイントを意識してみてください。
鼻の向きは先ほど説明した通り、お守りや運気アップを目的にするなら上向き鼻を選ぶのが一般的です。
素材とデザインにもこだわりたい方は、現地の職人が手がけたものを。量産品とは違う温度感と、ひとつひとつの表情が手仕事ならではの魅力です。
使い方で選ぶなら、キーホルダーは毎日持ち歩けてご利益を常に身近に感じられるアイテムとして人気です。インテリアとして飾りたい方には置物やオブジェも。
タイファン!の象グッズ
チェンマイをはじめタイ各地のマーケットで仕入れた、象モチーフのキーホルダーをご紹介します。意味や背景を知った上で選ぶと、きっとお気に入りの一点が見つかるはずです。

鮮やかなエナメルカラーの背景に、神聖な白象が威厳を持って描かれたメダル風キーホルダーです。
ゴールドの縁取り、伝統的なタイ模様(ボタニカル紋様)、そして「Thailand」の文字が美しく調和し、エキゾチックな魅力がギュッと詰まったアイテム。

まとめ買い率 No.1 のプチプラコースター。畳と同じ ”い草” を使った軽くて丈夫な一枚がタイらしさを感じます。
タイのホテルで使われていることを見たこともあるほどなじみある定番商品。

メタル系とは一味違う、ぬいぐるみタイプの象キーホルダー。
ぬいぐるみの立体感と愛らしいフォルムが人気で、子どもへのプレゼントや女性のバッグチャームとして幅広く使えます。
まとめ
タイで象が神聖とされる理由は、仏教における象徴・王室との歴史的な結びつき・人々の生活を支えてきた実用的な存在感、この3つが長い歴史の中で重なり合ってきたものです。
白象が最も神聖とされること、鼻が上を向いた象が縁起が良いとされること、象の行列柄が繁栄を意味することを知ると、タイの街で出会う象のモチーフがまったく違って見えてきます。
タイ旅行のお土産選びにも、日常の象グッズ選びにも、この記事が少しでも役立てれば嬉しいです。
参考資料
本記事の作成にあたり、以下のタイ語資料を参照しました。
- タイ王国議会博物館(พิพิธภัณฑ์รัฐสภา) 「ความเป็นมาของธงชาติไทย」 https://parliamentmuseum.go.th/ar63-Thai-Flag.html
- タイ王国コペンハーゲン大使館(สถานเอกอัครราชทูต ณ กรุงโคเปนเฮเกน) 「ช้างเผือกกับธงชาติไทย」 https://copenhagen.thaiembassy.org/th/content/ช้างเผือกกับธงชาติไทย
- chaidee.co.th 「พลายมหามงคล ช้างมงคล ตระกูลอัคนีพงศ์」 https://www.chaidee.co.th/service-details35.html